Q02 ロケットと比べるとコスト面はどうでしょう?
A02 宇宙に人や物資を持ち上げる費用が、100分の1程度になるといわれています。
ロケットによる打ち上げ費用は、一回あたり、数十億円から100億円といわれています。「ロケットと比べるとどんな利点があるのでしょうか?」でも紹介したように、現在の打ち上げロケットは、機体を使い捨てにしています。数十億円の機体を使い捨てにするので、一度の打ち上げで、機体の費用をすべてまかなわなければなりません。
また、有人ロケットの場合、一度に乗ることのできる人数は数人ほどです。機体の費用負担は、一人あたり数億円以上になります。さらに、費用が高いために、打ち上げの回数が増えません。機体を大量生産することができないので、なかなか安くなりません。打ち上げに必要な大量の推進剤にも、費用がかさみます。
実は、最新のジェット旅客機も、一機あたり100億円ほどです。機体の価格は、打ち上げロケットもジェット旅客機もだいたい同じです。しかし、飛行機での旅行にかかる費用は、数千円から数十万円で済みます。この違いは、機体を使うことのできる期間と、運ぶ量によります。
ジェット旅客機の機体が使われる期間は、10年以上です。30年以上という長い期間にわたって、現役で使われている機体もあります。機体を使い捨てにする打ち上げロケットとは対照的に、ジェット旅客機では機体を使うことのできる期間が長いので、その分、運賃を安くすることができるわけです。
ジェット旅客機では、整備などの期間を除いて、旅客を運び続けています。航空会社は、できるだけ機体が地上にいる時間を短くして、たくさんの旅客を運ぼうとします。例えば、最近増えてきた、格安料金のローコストキャリア(LCC)が可能なのは、様々なコスト削減の効果もありますが、機体を休ませずに飛ばし続けることによっています。
また、ジェット旅客機が一度に運ぶことのできる旅客数は、数百人です。小型のリージョナルジェットと呼ばれる機体には、旅客数が数十人というものもありますが、国際線も飛ぶような機体では、200人から500人ほどです。一度に200人運べる飛行機で、一日4回、10年間にわたって毎日運行すると、機体の点検期間などを除いても、機体の費用負担は、旅客一人あたり千円以下になります。
使用期間を長くできるので、一回あたりの費用は安くなる
宇宙エレベーターは、打ち上げロケットではなく、ジェット旅客機に近いシステムです。宇宙エレベーターでは、ケーブルもクライマーも、長い期間にわたって繰り返し使われます。建造にかかる費用は高くても、使うことのできる期間が長くできるので、一回あたりの費用は安くできるのです。また、将来的に大型のクライマーが実現すれば、一度に数百人の旅客を運ぶことができるようになります。
大勢の旅客を運ぶことで、一人あたりの費用を安くすることができます。エネルギー源も、宇宙太陽光発電などで安価な電力を使うことで、費用を抑えることができます。
宇宙エレベーターが実現すると、人や物資を宇宙に持ち上げる費用が、打ち上げロケットの100分の1ほどになるといわれています。現在の打ち上げロケットでは、一キログラムのものを宇宙に持ち上げるために、だいたい100万円かかります、それに対して宇宙エレベーターでは、一キログラムのものを宇宙に持ち上げるために、一万円から数千円ほどで済むようになるといわれています。
旅客一人あたりの重さを、荷物も含めて100キログラムとすると、宇宙に行くための費用は100万円ほどということになります。格安とは言えないかもしれませんが、打ち上げロケットでかかる数億円と比べれば、十分安いと言えるのではないでしょうか。