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Q03 宇宙デブリ問題も解決するのでしょうか?

A03 宇宙エレベーターの建造がスペースデブリ問題の解決を急がせるかもしれません。

「スペースデブリ」とは、地球を周回する軌道上にある役に立たない人工物体で、「宇宙ゴミ」ともいいます。寿命が尽きた人工衛星や、打ち上げに使われた上段ロケット、人工衛星とロケットの切り離しの際に分離した部品などが、スペースデブリとなって地球を周回しています。中には、人工衛星の破壊実験によって発生した破片という、迷惑なものもあります。

スペースデブリは、それぞれが人工衛星と同じで、秒速数キロメートルの速さで地球を周回しています。たとえ小さな破片でも、大きな運動エネルギーを持っているので、衝突すると危険です。実際に、2009年には、衛星電話用の通信衛星と、すでに運用を停止していた通信衛星が、軌道上で衝突しました。その結果、1000個以上の破片が軌道の周辺に飛散したといわれています。

また、スペースデブリは、小さなものほど数が多いという特徴があります。軌道上には、大きさが10センチメートル以上のもので1万5000個、1~10センチメートルのもので数十万個、1センチメートル以下のものなら数百万個ものスペースデブリがあるといわれています。
10センチメートル以上のスペースデブリについては軌道がわかっていますが、それより小さいものはわかっていません。さらに、スペースデブリ同士の衝突によって、小さな破片の数がどんどん増えてしまうのではないか、と心配されています。

ところで、スペースデブリには寿命があります。高度100キロメートルより上を宇宙空間といいますが、高度100キロメートルで大気がなくなるわけではありません。地球の周辺には、高度が高くなると薄くなっていくとはいえ、大気があります。
スペースデブリは、大気との摩擦によって次第に高度が下がっていきます。まれに大きなものは地上に落下するものもありますが、大部分はやがて大気中で燃え尽き、消滅します。落下するまでの時間は、高度によります。高度200キロメートル以下では数日、200~600キロメートルでは数年で落下し、消滅するといわれています。

しかし、高度600~800キロメートルでは数十年、800キロメートル以上にあるものは数百年、地球のまわりを回り続けます。さらに厄介なのは、3万6000キロメートルの静止軌道よりも高い高度にあるスペースデブリです。静止軌道よりも高い軌道にあるスペースデブリは、地球に落下することはありません。

スペースデブリのために、地球周辺の宇宙環境が急激に悪化して、宇宙開発にとって脅威になりつつあります。スペースデブリを大量に出してしまったことを反省し、現在ではスペースデブリを出さないようにするためのガイドラインが、国連で合意され、打ち上げ時の部品の放出禁止などといった対策がとられています。また、大きなスペースデブリについては、捕獲【ほかく】して、大気に落としてしまおうという計画も、いくつか提案されています。しかし、所有権の問題などもあり、効果的にスペースデブリを除去する方法は、未だに見つかっていません。

静止軌道よりも高い所のスペースデブリには、捕獲や排除といった対策を講じる必要も
宇宙エレベーターのケーブルは、地球を周回するすべてのスペースデブリと衝突する可能性があります。スペースデブリに限らず、地球を周回する物体は、原理的に周回軌道を含む平面が地球の中心を通るので、必ず赤道を通過します。10万キロメートルの長さで赤道上に伸びる宇宙エレベーターのケーブルには、高度10万キロメートル以下で地球を周回する物体は、遅かれ早かれ衝突することになります。そのため、宇宙エレベーターでは、人工衛星などの軌道がわかっているものについては、ケーブルを制御して衝突を避ける操作をします。10センチメートル以上の軌道がわかっているスペースデブリについても、同様です。
宇宙エレベーターで脅威になるのは、10センチメートルより小さい、軌道がわかっていないスペースデブリです。軌道がわかっていないスペースデブリは避けることができないので、宇宙エレベーターのケーブルと衝突する可能性があります。しかも、スペースデブリは、小さくなるほど数が増えます。

将来的に、10センチメートルより小さなスペースデブリまで追跡できるようになったとしても、そのすべてを回避し続けるのは困難でしょう。衝突すれば、大きさが10センチメートル以下と小さくても、ケーブルが損傷するかもしれません。ケーブルの保守や点検の方法、損傷などの問題が起きたときに補修する技術が必要です。

また、宇宙エレベーターのケーブルは、静止軌道よりもずっと高いところまで伸びているので、高度が静止軌道よりも高いところにあるスペースデブリについては、捕獲や排除といった、積極的な対策を講じる必要がありそうです。今後、スペースデブリが放出されないよう十分な対策がなされ、少なくとも高度600キロメートル以下にあるスペースデブリについては、宇宙エレベーターの建造が始まるときには一掃されていて、気にしなくてもよくなっていることを期待したいものです。

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