Q06 どれぐらいの重さのものまで運べるものになりそうですか。
A06 ケーブルの太さによります。
宇宙エレベーターで運ぶことのできるものの重さは、ケーブルが支えることのできる重さによって決まります。積荷【つみに】の重さとクライマーの重さの合計が、ケーブルが支えることのできる重さを超えると、ケーブルが切れてしまいます。加速や減速、ケーブルの振動などによってもケーブルにかかる重さは変化しますが、いま想定されているような宇宙エレベーターでは、それほど問題にはなりません。
つまり、宇宙エレベーターで運ぶことのできる積荷の重さは、ケーブルが支えることのできる重さからクライマーの重さを引いた分、ということになります。ケーブルが支えることのできる重さが大きいほど、また、クライマーが軽いほど、重い積荷を運ぶことができるわけです。
宇宙エレベーターのケーブルでは、支えることのできる重さは、ケーブルの太さによります。一般的には、ケーブルで支えることのできる重さは、ケーブルが強いほど、また、ケーブルが太いほど、大きくなります。ケーブルの強さは、ケーブルをつくっている素材によります。強い材料を使うほど、ケーブルも強くすることができるのです。
しかし、宇宙エレベーターのケーブルは、最も強い材料といわれるカーボンナノチューブを使うことが想定されています。これより強い材料がなければ、ケーブルを強くすることで、ケーブルが支えることのできる重さを大きくすることはできません。
つまり、宇宙エレベーターのケーブルで支えることのできる重さを大きくするためには、ケーブルを太くするしかないわけです。
補強はすでに設置されているケーブルに補強用クライマーを昇らせながら行う
いまの宇宙エレベーター構想では、長い時間をかけてケーブルを補強しながら完成させる計画です。完成品のケーブルを一度に宇宙空間に持ち上げることのできる打ち上げロケットは、残念ながら存在しません。そこで、はじめに、ロケットで打ち上げることができる重さのケーブルを宇宙に持ち上げ、展開して設置します。ロケットで打ち上げることができるケーブルは軽くなければならないのですが、宇宙エレベーターのケーブルは、全長が10万キロメートルもあるので、とても細いものしか宇宙に持ち上げることができません。そのままでは重たいものを持ち上げることはできないので、補強を繰り返すことで、次第にケーブルを太くしていきます。
補強は、すでに設置されているケーブルに補強用のクライマーを昇らせながら進めます。しかし、ケーブルが細いうちは、ケーブルに重たいものを掛けることができないので、クライマーと補強用のケーブルも軽くなくてはなりません。補強の初期では、わずかずつしか補強できないので、十分な重さを支えることができるようになるまでに、時間がかかってしまいます。
つまり、どんどん補強し、太くしていけば、どんどん重たいものを持ち上げることができるようになるわけです。ただ、ケーブルの方が重たいものを支えることができても、クライマーを持ち上げることができなければなりません。まずは、打ち上げロケットに対抗できる重さ(低軌道に20トンから100トン、静止軌道に10トン)から運用されるのでしょう。(佐藤 実)