/* 20211016: Need to repair */

Q07 宇宙エレベーターは荷物を運ぶためにつくられるのですか。それとも人を運ぶのでしょうか。

A07 人と荷物の両方です。

宇宙輸送機関である宇宙エレベーターは、空港や港、道路と同じような社会基盤の1つです。様々な社会基盤の中でも、鉄道に似ています。鉄道は水平方向への移動手段なのに対し、宇宙エレベーターは垂直方向への移動手段というところは異なりますが、ケーブルが線路に、クライマーが車両に対応しています。このため、宇宙エレベーターは「宇宙列車」と呼ばれることもあります。

鉄道では、1つの線路に旅客と貨物の列車を走らせますよね。それと同じように、宇宙エレベーターも、1つのケーブルに旅客と貨物のクライマーを昇降させます。ただ、旅客と貨物では目的や用途が異なるので、同じ編成に混載【こんさい】するのは、あまり効率的ではありません。鉄道に、旅客と貨物を混載する列車があまりみられないように、宇宙エレベーターでも、旅客と貨物はそれぞれ異なるクライマーで運ぶことになるでしょう。

目的は宇宙での活動が広がるにしたがって変化していく 宇宙エレベーターを使う目的は、旅客も貨物も、宇宙エレベーターが完成したことで宇宙へのアクセスが充実し、人類の宇宙での活動範囲が広がるにしたがって、次第に変化していくでしょう。

完成直後は、旅客では、日帰りや短期間の手頃な観光旅行が主要な目的になるでしょう。貨物では、資材や補給物資などを地球から宇宙に、特に無重力状態になっているので大きな施設が建造される静止軌道ステーションに持ち上げることが主要な用途になるでしょう。この場合、旅客の目的地は、高度数百キロメートルほどの低軌道高度、貨物の目的地はその100倍ほど高い、高度3万6000キロメートルの静止軌道高度になります。
旅客を運ぶ時間に比べて貨物を運ぶ時間の方がずっと長くなるので、ケーブルの強度に余裕があれば、物資を貨物用クライマーが静止軌道高度まで送り届けている間に、地表と低軌道高度の間を旅客用クライマーが何往復もする、という運用が可能になるでしょう。

また、将来的には、旅客はより遠くにある静止軌道ステーションや、さらにその先にある、宇宙エレベーターの回転を利用して火星や小惑星に向かって物体を打ち出すことのできる「軌道カタパルト」に行くことが多くなり、貨物は小惑星や月など、他の天体からの資源を大量に地球に降ろす作業が本格化するでしょう。その頃には、宇宙エレベーターのケーブルが複数張られ、旅客専用高速線や高速貨物専用線ができているかもしれません。(佐藤 実)

TOPへ