Q13 地球のまわりに静止軌道に沿ってリング上にケーブルを張り、そこから地表にケーブルを下ろすようにすると、わずか3ヶ所というような場所の制約はなくなると思えるのですが?
A13 そこで問題になるのが、「国際航空法」(民間航空協定=シカゴ条約)です。それは、特定国の領土・領海の上を領空と呼び、そこには、その国の主権が及ぶとしています。それに対し、「国連宇宙条約」は、宇宙には、地球の主権は及ばないとしています。
問題は、宇宙と領空の境目がどこにあるかについては、どの条約でも全く定められていないことです。これは不都合なので、長年にわたり、世界の国々の間で交渉が続けられていますが、近い将来に結論が出る見込みはありません。
そして、赤道上に領土・領海を有する1ダースの国々は、普通の人工衛星軌道は宇宙に属するが、静止軌道は、宇宙ではなく、領空に属すると宣言しています(ボゴタ宣言)。なにしろ、どこが宇宙だという法的規定はどこにもないので、この宣言を誤りとは言えません。その場合には、リングのうち、それらの国の上を通る部分は、必然的にそれらの国の領空を侵害しているとクレームを付けられることになります。この法的問題が解決するまでは、リング方式の宇宙エレベーターを作るのは無理です。(甲斐 素直)