Q23 宇宙エレベーターのトイレはどんなものになりそうでしょうか。
A23 低軌道高度では地上と変わりません。静止軌道高度では無重力状態に対応したトイレを使います。
宇宙エレベーターのトイレで問題になりそうなのは、無重力状態です。宇宙エレベーターで感じる重力は、高度が数百キロメートルの低軌道高度では、地上にいるのとあまり変わらないので、旅客機や鉄道で使われている既存のトイレを流用することができます。しかし、高度3万6000キロメートルの静止軌道高度では無重力状態なので、排泄物【はいせつぶつ】が重力によって落ちることを利用している地上のトイレは使うことができません。静止軌道高度では、無重力状態に対応したトイレが必要です。
無重力状態に対応したトイレは、すでに国際宇宙ステーションで使われています。掃除機のように、気流を使って排泄物を吸い込む仕組みになっています。ただし、国際宇宙ステーションで使われているトイレを使うには、訓練を受けなければなりません。例えば、排泄物を間違いなく吸引させるために肛門を所定の位置に正確に合わせるなど、使い方を習得する必要があるからです。しかし、訓練を受けなければならないようなトイレを使うことができるのは、限られた人数の宇宙飛行士だけが使うトイレだからです。不特定の乗客が使うトイレには向いていません。
無重力状態でも誰もが訓練なしに使えるトイレの問題は、日本の技術が解決するでしょう。日本には、世界的に見ても類を見ないほどハイテクなトイレがあります。人を感知すると便器の蓋を自動的に開け、用が済めばお尻を洗浄し、立ち上がれば自動的に流してくれるなど、もはやロボットといってもいいほどです。さらには、健康状態のチェックができるトイレまであります。肛門の位置をセンサーで把握して、排泄物を適切に吸引することくらい、わけはないでしょう。人が位置を合わせるのではなく、トイレが位置を合わせてくれれば、誰でも訓練なしに使うことができるはずです。宇宙では、日本のハイテクトイレが標準装備になるかもしれませんね。(佐藤 実)