Q25 宇宙エレベーターには、航空警告灯を付けなくともよいのでしょうか?
A25 国際航空法は、一定以上の高さの塔状の構造物は、必ず航空機から視認できるように、昼間も目立つようにし、夜間には灯りを設置することを義務づけています。
しかし、宇宙エレベーターのケーブルそれ自体は、きわめて薄く、遠距離からでは到底見えないほどだと考えられています。だから、それに航空警告灯を設置しなければならないのは当然のことです。そうでないと、航空機にとってはもちろん、宇宙エレベーターにとっても大変危険です。
これについては、航空警告灯を宇宙エレベーターに付けることは技術的に無理だが、宇宙エレベーターのまわり数百kmは、航空機の進入禁止ゾーンにしておけば問題はない、という主張もあります。しかし、そんなことをすると、宇宙エレベーターに搭乗するのに、海の上を数百kmも延々と船で接近しなければなりません。それでは、宇宙エレベーターの実用性を大幅に阻害していまいます。
考えられる答えは2つあります。1つは、宇宙エレベーターのまわりに高さ10km以上のシールドタワーを建てることです。これは、同時に宇宙エレベーター本体を嵐や稲妻から防御するのに役立つと考えられます。今ひとつは、宇宙エレベーター基部を、同様の高さの塔の上に設置することです。 米国では、宇宙エレベーターのクライマーの動力としてレーザー光線を照射することを検討しています。その場合、大気圏の中では、大気による揺らぎを防ぐことが困難で、正確に照射できません。そこで、そのような頂点が大気圏の外に出ている高い塔の上に基部を置くということを真剣に考えているわけです。
どちらの方法を採るにせよ、宇宙エレベーターを作るには、高さ10km以上の塔を作る必要があることになります。すでに、エアチューブを利用して、高さ20kmほどの塔を建てるという研究も行われています。(甲斐 素直)