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Q34 「宇宙工場」が実現したら、どんな工場になるでしょうか。

A34 宇宙エレベーターとその関連施設は大規模なものになるので、静止軌道上の産業化は速く進むでしょう。

2010年にあった「はやぶさ革命」のおかげで、月面や小惑星や彗星などの宇宙資源の利用はもうSFの話ではなくなりました。はやぶさの世界初の大成功のすぐ後、アメリカの2つのベンチャー企業が小惑星の資源探査衛星を造ると発表しました。そのため、宇宙エレベーターの軌道上の近くで必要になるインフラを整えるため、アルミやチタンや鉄や水素、酸素、炭素など必要となるものは月面や小惑星、彗星などの資源が利用されるでしょう。したがって工場だけでなく、地球と宇宙の貿易港も「エレベーター・タウン」の大事な施設になるでしょう。

太陽発電パネルを造る工場も現れるはずです。近年、地球上の工場で造られる太陽電池の総面積は約百平方キロになっています。太陽が出ているときの産出量は20GWに近いのですが、残念ながら、地球上では夜があり、雲が出るために、普通の太陽電池の利用率は10%以下となります。しかし、静止軌道上では太陽エネルギーをほとんど年中無休で利用することができるので、太陽電池の毎年の発電量は地球上の10倍を超えるでしょう。したがって、宇宙用の太陽電池は大規模なビジネスチャンスになるはずです。また工場のほとんどは太陽発電で動くでしょう。
ところで、太陽電池の主な材料はシリコン、アルミ、鉄などなので、そのほとんどは宇宙資源で造られることになります。現在設計中の「はやぶさ2」は、地球に帰りながら、世界で初めて宇宙資源から太陽電池を造る試みをすればおもしろいでしょう。

エレベーター・タウンの太陽電池工場の産出量が毎年百平方キロに達するのはまだ何十年も先でしょう。しかし、半世紀前に研究所で最初に太陽電池が発明されたときのように、最初に宇宙資源で造る太陽電池は一平方センチだけであっても人類の歴史に残るはずです。

宇宙工場では、太陽エネルギーのほか、真空や無重力を活用できますので、地球上で使えない機械を利用して、地球上で造れないものを造ることができます。それは製造業のエンジニアたちにとっては魅力的なことでしょうからで、「新しい産業革命」まで起こすことになると予測されています。近年、人間が使える地球資源が枯渇すると予想されるので、「資源戦争」の危険性は増しているといわれています。しかし、エレベーター・タウンの工場で宇宙資源の利用ができるようになれば、人間の使える資源は無限だとわかるでしょう。宇宙資源が利用できれば、22世紀には大幅な経済成長が期待できるので、まるで自転車のスポークのように地球から宇宙へと多数の宇宙エレベーターが伸びるようになり、宇宙に住む人口が地球の人口よりも多くなる時代が到来するかもしれません。(パトリック・コリンズ)

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