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Q12 宇宙エレベーターは、法的に見た場合、どんな場所に作るのが適切でしょうか?

A12 この問いに答えるためには、宇宙エレベーターがどのようなものか、考える必要があります。

第一に、宇宙エレベーターの設置場所は赤道上に限られ、しかも、様々な物理学的理由から、海洋上に建設することが好ましいのです。さらにいえば、地球重力場の安定性や、雷雨の発生頻度(カーボンナノチューブは、剪断【せんだん】にはきわめて強いのですが、高圧電流で焼き切れます)が低いなどの条件が加わりますから、赤道上でも建設可能な場所はかなり限られます。多分、地球全体で3ヶ所くらいしかないといわれています(きちんとした調査が行われたわけではないのですが、現在ある資料に照らすと、インド洋上、アフリカ西方洋上及びガラパゴス諸島の南方洋上が考えられています)。

第二に、赤道上に領土を持つ国は、1ダースしかなく、いずれも開発途上国で政治情勢が安定していません。スエズ運河やパナマ運河の例を見ればわかるとおり、いくらしっかりした約束を地元の国としても、政治情勢が不安定な国では、遅かれ早かれ約束は破られ、そうした施設は、その場所に主権を持つ国が占有する可能性が大きいと考えざるを得ません。しかし、第一の点に書いたような希少性のある場所(地球人類の共有財産)を、特定国に支配させることは好ましくありません。宇宙エレベーターを支配する国は、事実上、地球及び宇宙の支配が可能になるからです。

いかなる国の主権も及ばない公海上に建設する必要がある
この2つのことから、宇宙エレベーターは、いかなる国の主権も及ばない公海の上に建設する必要があります。
今、世界の海を支配している法を、「国連海洋法条約」といいます。海は、世界の国々の生々しい利害関係が激突する舞台ですから、この条約は、世界中の国が交渉し、妥協に妥協を重ねて、数十年がかりで制定したものです。その結果、宇宙エレベーターのために、それを修正するというようなことはとても考えられません。したがって、宇宙エレベーターの建設は、それに抵触しないように行う必要があります。

昔、この国連海洋法条約ができる前は、各国の領海の外は公海でした。しかし、この条約は領海の外に、さらに200海里【かいり】(360km)に及ぶ排他的経済水域というものを定めており、宇宙エレベーター基部のような人工施設の建設に関しては、沿岸国の主権はその範囲にまで及びます。したがって、宇宙エレベーターをいかなる国の主権の外に置こうとする場合には、その基部は、海岸から200海里以上離れた外洋上に建設しなければならないのです。(甲斐 素直)

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